高収量・高品質栽培の決め手は潅水??

儲かる農作物を生み出すために必要な要素でも特に影響が大きいのは潅水・水やりである
栽培とは即ち光合成能力の最大限発揮他ならないが、その一端を担う潅水について、植物にとっていかに水管理が大切であるか、農家の収入に「水」がどれだけ影響するかを考えてみたい

自分の畑から収穫される農産物の収穫量・品質に皆さんは満足されていますでしょうか?
きっと満足していないことだろうと思います。
かくいう筆者も全く満足しておりません。農家というものは収量や品質の追及をやめない生き物です。

家庭菜園者だってそれは同じことです。

当然皆さん常に高収量高品質を突き詰め、日々努力改善を行っていることと思いますが、
それらの目標を果たすために、小手先の肥料散布や整枝などの、いわゆる栽培手法の中でも枝葉の部分の情報にばかり敏感になりがちではないでしょうか?
肥料や機械等の情報はメーカーや農協側にも利益があるため、積極的に農家に与えられますし、資料やメーカー営業の言葉、近隣農家が使ってみて良かったという情報を耳にすると、どうしてもその資材を使いたくなっちゃうのが農家の性です。

しかし、この度注目するのは、栽培という行為の中でも、大きなウエイトを占める「水」の話です。
一つ一つの作物に対する細かなデータはとても並べられませんが、「水」に対する考え方を再認識していただければ幸いです。

当たり前のこと過ぎて特別考えず、カラカラに乾くと枯れる、大雨で浸かると腐る程度の認識の農家もたまにいるようですが、
主要産地の篤農家、最高レベルの収入を得ている農家で、水分管理を曖昧にされている人はいません。

灌水という行為が作物の品質・収量に与える影響は、様々な要因の中でもトップレベルに高いのです。

根本的な事ですので、きちんと力を入れて指導員によって対策されたり徹底している産地では、特段意識していないようでも
自然とその作物に適した状態の土壌水分量を保てている場合も勿論ありますが、そうでない場合は一考しましょう。

植物体内の90%以上は水分です。
栽培初心者の方が想像しているよりも沢山の水分を投じてやれば、見違える収量に跳ね上がるということもあり得ます。
もしも今まで潅水設備の整っていない圃場で夏野菜を栽培されていたなんていう場合では、梅雨明けの乾燥時にひたすら潅水すると、それだけで収量が倍増したなんてことも珍しくありません。

栽培とは、目的植物の光合成効率を上げる作業に他なりません。
夏場の日照量に対して十分な潅水量を確保できているのか、もう一度考え直してみてください。

勿論、栽培作物によっては、かなり水分要求量に違いがあります。あなたはその時期の日照量に対して、作物の光合成能力、ポテンシャルいっぱいいっぱいを発揮できる量を潅水している、と断言できますか?できる方はこの記事を鼻で笑ってスルーして頂いて構いません。

しかし、そうとも限らない、という方は、それだけで間違いなく収量を下げています。即ち、本来得られるはずの農業収入を自ら捨てているのです。

また、高糖度を目指すために水分量を減らす栽培をしている方もいらっしゃいますが、確かに果実糖度を上昇させるタイミングで水分量が極端に増すと、十分に糖度があがりません。
それでも、肝心の糖分を生成しているのは、紛れもなく葉面で行われる光合成なのです。光合成能力を最大限発揮するための水分量は必ず確保しましょう。

水分量が豊富であれば、地上部の生育は益々発達し目に見える効果が表れますが、長期間の栽培を余儀なくされる作目の場合は
根量の確保も必要です。水分量が多すぎると、地上部に比べて、地下部の生育が進みにくくなります。
目に見えないため経験を要しますが、生育初期は潅水量を控えて、長期生育のための基礎足場作りとして根の発育に集中させる事が大切だと主張される方も多いようです。

難度が上がってきますが、考えて栽培するのと、考えずに栽培するのでは収量・品質、ひいては収入面に大きく影響します。

また、当然葉の量、葉の受光体制の影響で、必要な潅水量は変化します。
葉がわいわい茂ってくれば、その分光合成能力は高まってきますし、葉からの水分蒸散量も格段に増えますので、水分要求量は多くなってきますが、一方、これが茂りすぎて密集し、日陰が多くなると、葉の受光体制が整わないため、需要量自体が少なくなります。
葉の様子を常にチェックし、窒素は勿論、マグネシウム他欠乏症状によって葉の光合成能力が下がっていないかを同時にチェックしておかなければ意味がありません。

主要産地の篤農家であれば言わずと知れた内容ですが
指導員から言われるからこれだけ潅水している、というだけでなく、これを機に、なぜそのような潅水になるのかを把握し、勉強しなおすことで
その場その時に応じた適切な応用を利かす事ができるようになり、問題の解決や、他より一つ抜けた栽培技術の追求に繋がるかと思います。

潅水云々以前の、雨が降ったら畑に水が溜まってしまうような土壌環境では、そもそもそこまでのレベルの栽培に挑戦することすらできません。
ある程度の栽培能力を有した人がこぞって農地を厳選し、連作障害を無視してでも優良圃場にこだわるのは、連作障害の収量低下よりも
土壌物理性の良し悪し、つまり水分管理の良し悪しによる収量の増減の方が遥かに大きいためなのです。

そもそもの土壌物理性の改善については、またの機会に!

今回は水について、皆さんも自分の栽培を振り返り、もう一度考えてみましょう。

 

つる@ノウカノタネ
農業ポッドキャスト番組「ノウカノタネ」のプロデューサー&パーソナリティ。
福岡市でナスやカブ等の野菜を生産しつつ、果樹園芸指導員としても勤務。
農閑期には農業ライターとして農家に身近な話題を提供している。

 

 

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こんにちは。新農研です。

今回もノウカノタネのツルさんにご寄稿頂きました。

ノウカノタネさんではポッドキャストを放送されています。

私もよく拝聴しておりますが、実際に農業に携わっている方の生の声を聞けて参考になります。

ぜひ皆さんもノウカノタネさんのポッドキャストをチェックしてみてください。

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